先日、下北沢の本多劇場で「魔王コント」観劇して参りました〜(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ
といっても既に一ヶ月くらい経過しております(^_^;)
「魔王コント」、脚本演出は元芸人の家城さんなので話が面白そうだし、
出演はぴろし、小林且弥さん、加藤啓さんなど「るひまですか!!?」とツッコミを入れたくなるようなキャスティング。
これは観に行かねば!
座席は一階通路のすぐ後ろというものすごく見やすい場所!
脚は伸ばしたい放題だし、演出いかんによってはすぐそばを通る可能性もあるではありませんか!!!!!
期待は膨らみます。
■あらすじ■
(第一部)
魔族が地球を支配し、人々を殺戮する暗黒の時代だった。
ある貧民地区に暮らしていたサルト(ぴろし)は、親友のアドラが偶然拾ったピストルを借りて、レヴィス(石田さん)とガーナ(紅一点・望月さん)と4人で、なりゆきで魔王を退治することになってしまった。
ドラクエ的な話の流れがあると思いきや、魔王はすぐに現れる。
サルトはピストルで魔王を撃つが何もダメージを与えられなかった。
「これはお前のピストルか?」
魔王に尋ねられたサルトは首を横に振る。
「ではお前のだな」
そしてアドラがあっさり殺された。
「撃ったのはお前かとは、聞かれなかった・・・」
自分のせいで親友の命が奪われたことに落ち込むサルト。
その前に魔王の手下のフロムが現れる。
「魔王の殺し方を教えてあげよう」
フロムの言うとおり、サルトたちはタイガーバームを7つ集め神さまを召喚(ドラゴンボール風)。
願い事を言おうとすると、そこには神ではなく、魔王が立っていた。
「願い事を言え」
死んでほしい本人を目の前に「魔王の死」を願えないサルトは「アドラを生き返らせてほしい」という。
しかしアドラは既に魔王の手によって魔族として生き返っていた。
コンプレックスの塊だったサルトは「自分をほめて欲しい」という願いを叶えてもらう。
「せっかくのチャンスだったのに、なぜ魔王を退治しなかったのか?」レヴィスとガーナはサルトを責めた。
「本人を目の前に魔王の死を願えるか?」サルトは訴えるが、二人は「できるけど!!?」と言い切る。
「でもアドラを生き返らせてもらったんだ、アドラがいれば良い作戦を考えてくれるはず」サルトは咄嗟に嘘をついた。
そこに生き返ったアドラが登場。
サルトを刺して命を奪う。
あっさり死んでしまったサルト。
そこに魔王が現れる。
「魔族として私に仕えるならば生き返らせてやろう」
「よろしくお願いします!」
サルトはあっさり魔族になってしまったのでした…。
<<謎の30秒休憩>>
(第二部)
魔族の生活は悪いものではなかった。
そこには先に魔族になったアドラもいた。
しっかりとした規律、充実の福利厚生、そして成果を出せば出世が叶う分かりやすいシステム。
成果というのは人間を計画的に殺すことだった。
最初は「そんなことできない」と命令に背こうとするサルトだったが、
「ならばお前には死んでもらう。魔族が死んだら永遠に生き返ることはない。どうする?」とフロムに迫られ、人間を殺めることに。
慣れとは恐ろしいもので、サルトは次々に計画をこなしていき、そしてどんどん魔族の世界で出世して行った。
しかし、命令には矛盾が沢山あった。
「今日は人間を脅かすだけで殺さないで良い」とか
「今日は人間に勝たせてやるから魔族側のお前が死んでくれ」とか・・・。
ある日、サルトたちが住んでいた地区を襲撃することになった。
「魔王の手下に成り下がっていたとは!!」激昂したレヴィスはサルトを襲おうとする。
そのサルトの盾となって命を落としたのがピノという魔族だった。
咄嗟のことだった。
サルトはレヴィスを刺し殺してしまう。
自分のせいでピノを殺させてしまい、自分のせいでレヴィスの命を奪ってしまった。
落ち込むサルトの前に、やっぱり魔族になったレヴィスが登場!
レヴィスもどんどん仕事をこなし、どんどん出世した。
「一層のこと、ガーナも殺してみんなで魔族として暮らせばいいのでは?」
「人類が全員魔族になれば良いのでは?」
そんな疑問がわく。
「そもそも何で戦い合わなきゃいけないシステムなんだ?」
人を殺すことは悪いことだし、だからと言って魔族だってそれぞれ友人も家庭も持っている良い奴ばかりだ。
みんなが平和に暮らすすべはないのか?
魔王が存在する意味はあるのか?
沢山の命を奪う魔王が許せない。
そんな時、サルトは魔族ナンバー2の昇格の辞令をもらう。
サルトは魔王の部屋に呼ばれ、魔王の素の姿を見る。
それは小さくて心優しい一人のおじさんだった。
壁には人間を殺す目標などが掲げてある。
「何でこんなことをするんだ、あんたにとって人間とはなんなんだ!?」
サルトは問い詰める。
「愛しい存在だ」
魔王という存在がなかったとき、人は人同士で傷つけあい戦争を起こし絶滅しそうになった。
人類共通の敵を作ることで人同士殺しあわないようにしているという。
けれど絶望させないように、たまには人類に勝利を与えタイガーバームの仕組みを作り希望を与えた。
しかし、魔王の力は弱ってきていて人類は再び大戦を起こそうとしていた。
「もう、疲れた・・・」
弱り切った魔王はサルトに言う。
「私を殺しに来たのか?」
サルトは「お疲れ様でした・・・」と戸惑ったように部屋を後にする。
世の中は矛盾でできている。
魔王は人間が好きだから、生きていて欲しいから、だから自らの手で殺す。
フロムは魔王が好きだから、その苦しみから解放してあげたいから、魔王を殺したがっていたサルトを魔族になるようにスカウトしていた。
また、魔王もサルトがタイガーバームで自分を召喚した時に、自分の死を願ってくれるものと期待していた。
サルトは皆の思いを受け、魔王を倒すことにした。
サルトが再び魔王の元を訪ねると、魔王は変わり果てた姿になっていた。
二度もサルトに殺されなかった魔王は絶望して自らの命を絶ってしまったのだ。
魔族の世界はどうなるのか?
そこに人間が大戦を始めたとの報告が入る。
このまま人類は滅亡してしまうのか?
サルトは立ち上がる。
「我こそが魔王サルトである!!」
圧倒的なカリスマ性を放つサルトに皆がひれ伏す。
私の当初の予想や期待に反してなんという哲学的な話だったのでしょう。
世の中は矛盾でできている。
正義を作るために悪が存在する。
立場が変われば今まで悪だったものが正義として成立することがある。
正義とは一体何なのだろう?
人類共通でそして永遠に答えの出ないテーマなのかもしれない。
そして、私は昔自分の中で答えを出したことを思い出すのです。
「考えたところで時間の無駄である」と。
「矛盾を受け入れて自分は自分の人生を精いっぱい生きればいい」と。
「なぜこの話が『コント』なのか?」という問いに家城さんは「魔王の生きたかや環境がまるでコントのようだから」とツイッターに書いてました。
こういう考え方に私は少し救われるような思いがしました。
そんな魔王になったサルトは、
タイガーバームを集めたガーナによって召喚され「死んで」とあっさり言われ
「だよね〜」ってところで終幕します。
最後の最後が笑える展開だったので、落ち込んだ気分にはならずに済みましたが、だいぶもやもやした気分にはなる話でした。
ちなみに舞台を降りてくる演出はなく、ぴろしたちは近くを通ることはありませんでしたが良席だったのでものすごく見やすかったです。
■キャスト
サルト役 矢崎広くん(ぴろし)
最初のへらへらした感じの自分を見出せない若者から、一転して仕事をバリバリこなして徐々に自信をつけてオーラをまとっていく姿はすごいなぁと思いました。
可愛くてみっともなくて格好良くて切なくて、愛すべき素敵な若者でした。
レヴィス役 石田明さん(ノンスタイル)
さすがお笑いの舞台の経験を積まれているだけあって「間」の取り方が絶妙でした。
シリアスな場面を見事にブチ崩して笑いに持っていくタイミングやら雰囲気が素晴らしかったです。
アドラ役 小林且弥さん
悩ましい哲学者のようなアドラ。
且弥さんのまじめなお芝居そういえばすごい久しぶりに見たかも…。
Aフロム役 加藤啓さん
ふざけた芝居しか見たことないと言えば啓さんですよ!!
こんな切なくて愛にあふれた紳士的な啓さんは初めて見ました。
超絶格好良くて惚れてしまいましたよ!!!
■音楽■
劇中に使われている曲が素晴らしかったです。
一番のメインに使われていたのが
モーツァルトのレクイエムより第三曲「怒りの日(ディエス・イレー)」
フロムがその悲しい愛について語る時に使われていた曲が
エディット・ピアフの「愛の賛歌」
エンディングに使われていた曲が
ペンタトニックスの「ハレルヤ」
ちなみに、怒りの日はCMなどでものすごく聴いたことのある曲だったのですが、その時の私は曲名を知らなかったので頑張って探しました。
なぜか「車のCMで使われてなかったっけ?」と思ってしまったので、全然見つけられないという残念な結果に。
次に思い立ったのは「モーツァルトの魔笛にものすごく印象が似てるけど?」ということでした。
ただ魔笛ではないことは知っていたので、曲がオーケストラを伴っての男女混声合唱曲だったということから、「オペラの劇中歌なのでは?」と必死にオペラを検索したけど見つけられず。
次に「おそらくドイツ語だろう」ということと「神様に祈っているだろう」ということで、讃美歌か鎮魂歌かどちらかだと推測。
でも何だか曲の和音が鎮魂歌っぽいから、レクイエムで検索したらようやくHITしました!
3時間くらいかかりました(T_T)
魔笛とは話的にもちょっと似てるし、結果的には魔笛を作りながらのレクイエムの作曲だったということで、当たらずしも遠からずというところでした。
YOUTUBEのコメントを見ていたら、「ロト7www」という書き込みが沢山あったので、これかーーーー!!!!
って思いました_| ̄|○ ガクッ
何で車のCMで使われてたって印象だったんだろ?
ロト7のこと思い出せればもっと早く検索できたのになぁ(^_^;)
■検索したら理解が深まるかも?
登場人物の名前は、哲学者の名前から取ってつけられたそうです。
サルト→サルトル(実存主義とは?)
アドラ→アドラー(アドラー心理学)
レヴィス→レヴィストロース(野生の思考)
フロム→エーリッヒフロム(愛するということ)
私はこの舞台を見終えた後
「聖書の中で神が殺した人間の数は200万人を超えるが、悪魔が人間を殺した数は10人である」
という言葉を思い出しました。
そして「魔笛」の話も思い出しました。
「神は死んだ」というニーチェの言葉や、ニーチェの本にちなんで作られたシュトラウスの「ツァラストラはかく語りき」が脳内再生されたりして。
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ただ笑って観れるかな?
という考えは大きく覆させられる複雑で哲学的で大いに考えさせられる作品でした。
なので、観劇レポも書くのにものすごく時間がかかりました(^_^;)
あまり複雑な話はそんなに好きじゃないのですが、でも、最後笑っての終幕だったので良かったです。