先日、村井くん主演の舞台エムキチビート第13回公演『アイワズライト』を観劇して参りました。
I was right かな?って思ったら
I was lightでした。
私は光だったーーーーーー
絶対泣く話だろうな、と思ってちょっと覚悟して臨んだんですが
思った以上に辛くて可愛そうで
最後は大号泣していたので、もう観てられなかったです・・・。
その目の不自由な男の子は、深い森の中で「ピーターパン」の物語を描いていた。
その隣で物語を記録していく親友がいた。
そして終わらない物語がゆっくりと動き出す。
かつて光であった全ての「あなたへ」旅立ちの物語を。
記者と名乗る老齢の男性(スミムラ)が若い女性(ワスレナ)を訪ねるところから話は始まる。
ワスレナがブログに書き記した不思議な話について、インタビューを始める。
5年前震災直後。
災害支援ボランティアだったワスレナは危険区域にあるとある施設を訪れる。
誰も居ないと思われたその施設には、「マシロ」という盲目の青年と寄り添うようにそばにいる「ハイバ」という青年がいた。
「マシロ」は自分なりのピーターパンの物語を描いていた。
「もういいかい?」
「マシロ」がまぶたに手をあて空想の世界に問いかけると、ネバーランドの世界が色鮮やかにそれはエネルギッシュに動き出す。
「ハイバ」はノートパソコンで「マシロ」の話を記録していた。
「ハイバ」はワスレナに何度も「帰ってくれ」と突き放すが「マシロ」は「一緒にいて物語を一緒に描くのを手伝ってほしい」という。
僕を置いて行かないで・・・!
一人にしないで・・・・!!
「マシロ」と「ハイバ」が出会ったのは10年前の中学生の時。
「マシロ」は特別養護教員の協力を得て普通クラスに通うことになった。
目の不自由な「マシロ」はいじめの対象に。
同じくいじめの対象になっていた「ハイバ」とは図書室で出会い友情を育むようになる。
「かくれんぼして遊ぼうぜ」
「マシロ」はいつも鬼だった。
見つけられない、見つけたところで見えない。
「もういいかい?」
ずっとずっと一人で問いかけ続ける。
何十分も何時間も。
「ハイバ」は一度そのいじめに加担してしまったことがあった。
いじめっ子たちに隠されたノートパソコンを取りに「ハイバ」はかくれんぼが始まる屋上へ戻った。
「マシロ」が言う。
「ハイバ、もう、いいよね・・・?」
その瞬間、「マシロ」は屋上から飛び降りた。
物語の中のピーターパンは空を飛べない設定だった。
そしてティンカーベルの言葉が聞こえなかった。
物語のピーターはちょっと強引で先を急ごうとする。
仲間たちの間で起こる衝突や不満はピーターに向けられる。
「そもそもピーターは何で飛べないんだ?」
「偽物なんじゃないか?」
物語は感情的でとても散文的だ。
違う、僕は偽物じゃない。
どうしてだ?
どうしてみんな僕を信じてくれないんだ?
うまくいかない。
どうやっても物語を理想に持っていけない。
「何度やってもダメなんだ。
何度やってもうまくいかないんだ」
中学時代の苛められていた記憶がよみがえり邪魔をする。
その度に「マシロ」は発狂して吐いて倒れてしまう。
なぜだ?どうしてだ?
錯乱する「マシロ」に「ハイバ」は静かに寄り添う。
またやり直そう。
ダメだ、「ハイバ」の時間を進めてあげなくちゃ。
物語を終わらせなくちゃ・・・。
「偽物!」
「偽物!!」
偽物のピーターを海賊・インディアン・そして仲間が包囲する。
僕は偽物なんかじゃない・・・!!
「マシロ」はマシロじゃないんだ・・・。
「マシロ」はマシロじゃないから、だから物語をどう進めていけばいいかが分からないんだ。
「ハイバ」は語る。
「マシロ」はハイバ。
目の前でマシロに飛び降りられたハイバは、発狂する。
自分のせいでマシロを死なせてしまった。
マシロを死なせたくないという気持ちから自分が「マシロ」なんだと思い込むようになる。
そして精神病の施設に入れられた。
彼は昔マシロやハイバを苛めていた生徒の一人だった。
学校を卒業した後に介護の職に就いた。
二人が再会したのは震災の時。
崩れるビルの中再会した。
「マシロ」が自分を「ハイバ」と呼んだから。
僕は「ハイバ」になると決めた・・・。
そこから二人の時間は止まったままだった。
現在と過去と空想と現実と狂気が錯綜する。
お母さん、どうして僕を棄てたの?
「マシロ」はワスレナの中に母を見たのかもしれない。
ワスレナには恋人がいた。
ワスレナには障害を持った弟がいた。
恋人と結婚しようとした時、彼の両親に反対をされた。
「障害の遺伝子を持つ女と結婚させるわけにはいかない」と。
ここに来れば死ねると思った・・・。
死なないで、お願いだから
ワスレナがハイバを抱きしめる。
物語が動き出す。
ピーターを救ったのは、ティンカーベルとロストボーイのリーダーだった。
ピーターを後押しするとほかの仲間も続くようにピーターを援護した。
「ありがとう、ティンカーベル。
ずっとそばにいてくれてたんだね」
マシロの姿をしたティンカーベルは嬉しそうに笑った。
そこから5年は何があったかはわからない。
スミムラは実はマシロを担当していた特別養護の教員だった。
スミムラの時間もまた止まったままだった。
どうして助けてあげられなかったのか。
そこにタイムカプセルとして埋められていたマシロからスミムラへの感謝の手紙が届く。
最後に感じたものは一筋の光。
私はあなたにとっての光だった。
私はあなたにとっての希望だった。
最後は少し救われたのかな。
「マシロ」と「ハイバ」は震災の時にがれきの下敷きになって亡くなってしまっていた。
彼らが成仏できていると信じたい。
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スミムラとワスレナが出会って話している現在。
震災があった5年前。
彼らが中学生だった頃の15年前。
そして空想の世界。
色んな世界と時間軸が交錯して複雑なんだけれど、心が振り回される作品でした。
ワスレナの現状は語られていなかったけれど、あの時お腹の中にいた子供がマシロの生まれ変わりで今度は笑って幸せに暮らせているといいなとか。
震災ボランティアでカキツバタ君というワスレナに一目ぼれした男性スタッフがいたんだけれど、その人と結婚してるといいなとか思いました。
暗く重く繊細な物語の世界観を思いっきりぶち壊してくれる空気が読めない明るい男カキツバタ。
カキツバタはこの舞台の中で私にとっての光でした。
最後は少し救われたのかな?
というお話でしたが、良かったねとは決して言えない話ですよね。
そもそもどうして障害を持った頑張り屋さんの少女が自殺しなくちゃいけないかって思うんですよ。
演じていた黒沢ともよさんが背が低いこともあり、本当に子どもにしか見えなかったんです。
こんなに小さい子がこんなに苦しんで・・・と思うとたまんなくなります。
この間、障害者の施設で最悪の事件が起きましたよね。
こんな風に障害者を思う人間もいるのかとすごくショックでした。
そして東日本大震災の時、誰も救助に行くことができずに放置されていた場所が沢山ありました。
救助を待って待って絶望の中亡くなっていった方が多かったんだろうと思うと胸が締め付けられます。
こんなに進んだ国だと思ってたけど、何もできなかった。
いじめの問題、障害者への偏見や差別、世の中にはまだ解決することのできない難しい問題が山積していて、私たちはその中で生きている。
自分の無力さを感じます。
無力さを感じながらも前向きに生きて行かないとなんですが。
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「マシロ」役 村井良大くん
今回の村井くんは、透明感あふれる繊細な役どころでした。
盲目の役ということで目は開いているし、話す人の姿は追っているけど焦点は合っていないんです。
22〜23歳くらいの青年役だったと思うんですが、時間が止まっているので中学生みたいな子供っぽい感じもあって。
心が揺れ動く感情が、こちらに響くどころか突き刺さってきて本当に辛かったです。
改めてすごい役者さんだと思いました。
「ハイバ」役 末原拓馬さん
「マシロ」の影となり支えとなり静かなんですが、安心感というか安定感というか。
力強い存在感があって素敵でした。
マシロ役 黒沢ともよさん
劇中では本当に子どもにしか見えなくて、後で調べてしまったんですが、20歳の女優さんでした。
身長が150cmないということで・・・まぁ私が小学校4〜5年生くらいの時の身長ですね(^_^;)
軽やかでやっぱり透明感があり心に残る女優さんでした。
演奏
今回はストレートプレイでしたが生演奏でした。
ピアノとヴァイオリンとチェロの三重奏で、それはもう気持ちが昂ぶった時に心に突き刺さる演奏を奏でてくれるものだから、余計に気持ちが荒らぶりました。
DVD
アイワズライトはDVD化されるそうです。
こんなにも辛い作品は2回は観れないので、今回は買わないことにしました。
やっぱり私は喜劇が好きです。